慢性腎不全では上記のネフロンが死んでいき、数ヶ月から数年に渡って腎臓のろ過機能が低下していきます。腎不全の進行は血液検査でBUNとCREの数値で判断されます。BUNは
Blood Urea Nitrogen の略で、血中尿素窒素を表します。猫の場合、
BUNの正常値は20〜30で、これを上回ると脱水、腎障害、尿路障害等が疑われます。CREは
CREatiine
(クレアチニン)で、これは筋肉の中に含まれるクレアチンという物質が分解されてできる老廃物です。クレアチニンは糸球体でろ過されて尿へ排泄されるのですが、腎機能が低下すると尿へ排泄されずに血中に残り再び体内へ運ばれてしまうのです。猫の場合、CREの正常値は0.6〜1.6で、これを上回るとやはり腎障害、尿路障害等が疑われます。
腎臓は肝臓と同様に、沈黙の臓器と呼ばれています。目に見えておかしいとわかったときには腎機能の70%以上が失われているといいます。そして、一度死んでしまったネフロンは生き返ることはなく、腎不全を”治す”薬というものはありません。あるのは腎不全の悪化を防ぐ薬です。ですから、慢性腎不全の場合、残された細胞をいかに長く使うかが重要となってくるわけです。
どうやって、残された腎機能を長生きさせるか?・・・私は、そのポイントとなってくるのが腎臓へのINPUTとOUTPUTだと思います。INPUTは如何にきれいな血液を送り込むか、すなわち、健全な食事、水分、運動です。そしてOUTPUTとは如何に清潔な排泄環境を整えるか。猫さんの腎臓と飼い主さんががんばって最善のきれいな尿を作ったとしても、トイレが汚れていたりすると、ばい菌が繁殖し、尿を伝わって腎臓にダメージを与えてしまいます。また、膀胱・尿路に障害を持っていて、膀胱に尿が溜まったまま体外への排泄がうまくいかないと、やはり膀胱内、尿路内でばい菌が繁殖し、尿を伝わって腎臓にダメージを与えてしまいます。猫は通常、1日1〜2回尿をします。すなわち、多少なりとも尿は膀胱に溜まっているわけですが、このとき、膀胱に溜まっている尿がアルカリ性に傾いているとばい菌が繁殖しやすい状況を作ってしまいます。ですから、トイレ・膀胱・尿路への気遣いも忘れないようにしましょう。
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